2002/02/11 作成

あぶくま駅



人家がなく川下り船の観光客を待つだけの駅だが、1月という真冬に人が寄り付く筈も無い

        

駅舎は地域の産業と文化を今に伝える伝承館となっているが、玄関はぴったりと閉鎖されていた。  バーベキュー用の釜戸が悲しく放置されていた。

        


駅から見下ろす阿武隈川。 着場までは急坂の歩道を約3分降りて行く。   船着き場からも素晴らしい眺め。

   訪問日記  2002年1月2日 訪問

  ここは第3セクターにより経営されている阿武隈急行線の小さな駅。周囲に人家はなく、駅舎は地域の産業と文化を今に伝える産業伝承館となっている。
 眼下に阿武隈川の雄大な眺めを望み、坂道を3分ほど降りて行くと観光船下りの船着場に出る。恐らく駅の利用者は船下り観光が主な目的で、日常的な
 利用は無いと思われる。さらにここへ鉄道以外の手段でやってくるのは並大抵の事ではない。国道は川を挟んで対岸を通っているが橋が無いため、徒歩
 で来ることもままならない。クルマで訪問しようにも、険しい山肌を縫うような狭い道をたどってくる以外に方法がない。建物の雰囲気こそ観光要素が強いが、
 かなり凄まじいロケーションに位置する秘境駅といえよう。
 
 ちなみに阿武隈急行線は、途中の丸森駅から東北本線と接続する終点の槻木駅までが旧国鉄の丸森線であった。それを主要駅の福島まで全通させて
 盲腸線から脱したうえ、交流電化まで実現させた進歩的な路線である。新しい路線ゆえトンネルや高架が多いものの、赤字の盲腸線のまま廃止へと追い
 込まれる路線が多い昨今、いち鉄道ファンとしても嬉しいものである。こうして福島駅を出発するが、平凡な町並みに少しがっかりしながらも、途中の梁川で
 乗り換え、富野駅を過ぎるころから車窓に変化が現れた。山間に入り阿武隈川に寄り添うとともに周囲の人家は少なくなり、隣の兜駅は既に秘境駅の資格
 充分である。すでに車窓から目が離せなくなり、幾つかのトンネルを潜った辺鄙な場所で電車は停車した。妙な形をした屋根を持つ建物に片面ホーム…。
 
 ここが“あぶくま駅”だった。こんな場所で降りるのは私ひとり。他の乗客の視線が刺るが、このような事をいちいち気にしていたら“秘境駅訪問家”なんて務
 まるはずもない。この奇妙な建物に、この時期に誰一人も居るはずも無く、入り口はしっかりと閉められていた。次の電車まで1時間ほどあるので、早速周囲
 を探検してみた。雪に埋もれた歩道を滑らないように注意しながら3分程降りて行くと、あっけなくコンクリートだけの船着場に到着。しかし、それ以外は何も
 ない…。少々辺りを歩き回っていたら、次第に天候が悪化して激しく雪が振ってきた。仕方ないので、先程の建物の軒下で自動販売機で買った缶コーヒー
 で温まりながら列車を待つ。そんな変人を嘲笑うかのように、横殴りの雪が頬を冷たく刺して行った。