2001/08/02 作成
早戸駅
只見線 “早戸駅” 朝靄がかかる只見川の辺りに駅は佇んでいる
駅名標の字は薄いため、白く飛んでしまった 川面に朝靄がかかっていて幻想的 駅名標の裏には何故か“ひらがな” 人気の無い寂しい夜が訪れる
訪問日記 2001年7月20〜21日 駅寝訪問
ここは只見線の沿線に沿って流れている只見川の辺にひっそりと存在している。周囲に人家はなく、集落からも遠く離れており、何やら寂しげな雰囲気を呈してしる。ただ、
国道252号線が脇を通り、時折通過して行く自動車の騒音だけが人の営みを感じさせる。とは言え、恵まれたロケーションに救われているせいか、雰囲気は悪くない。ここから
約800メートル先には“早戸温泉”があり、共同浴場は何と“混浴”なのであった。数年前にオフロードバイクで林道を駆け抜けていた時代、この温泉へ偶然入ったことがあった。
その温泉は“鶴が発見した伝説の温泉”として知られていて、名も“つるの湯旅館”という。附近の共同浴場も兼ねているようで、湯船はコンクリ製の簡素なものであった。さらに
脱衣所もカーテンが引かれているだけという、非常に危なっかしいものだが、今時珍しい情緒溢れる温泉とも捉えることも出来る。バイクで訪れた当時、私がのんびりと一人で
入浴していたが、突然、7〜8人の婆さんがケタタマしく、独特の下品な笑い声とともにゾロゾロと入って来くではないか。閉口しながら、即座に上がってしまう私がいた。
今回、私はこの只見線の秘境駅訪問をすべく、ここから5駅先にある“郷戸駅”を訪問した。向かう途中で駅寝に適していそうな駅を確認しながら進んで行ったが、ここには古い
駅舎が残り、素晴らしいロケーションとあいまってすっかり気に入ってしまい、今夜の宿に決めていた。“郷戸駅”から降り返してきた私は、車掌に切符を見せながら降りて行く。
周囲はすっかり闇に包まれ、並走している国道にも車の姿も既に無く、し〜んとした静寂だけが辺りを支配していた。駅舎に向かい、待合室の扉を開けると造り付けの長椅子が
あるではないか!水道こそ無いものの、締め切りも出来る環境は、及第点が与えられよう。しかし、虫の死骸が多く、備え付けの箒で一通り清掃をした後、エアマットを敷いて
寝床をセットした。蒸し暑いのでシュラフをかぶらなかったが、今日一日の疲れもあってか、快適な一夜はゆっくりと過ぎて行った。
明朝は5時に起き、駅とその周囲の調査・撮影をした。川面には“もや”が掛っていて、とても幻想的な情景を醸し出し、暫しその雰囲気に魅了されてしまった。しばらくすると、
大きめな“犬”を連れた一人の叔母さんが、線路脇のカヤや雑草を、鎌で刈り取り出した。連れていた犬は当初私の事をとても警戒していたようで、遠目に吠えてはいたが、そ
のうちに近づいて私に甘えて来た。私は犬が苦手だ(相性が良くない)が、無粋に吠えることも無く、“御座り”も素直に出来て、以外に愛想の良い奴だった。少し可愛がってやる
と調子に乗って“体当たり”までして来るではないか。ふと時計を見ると、乗車する列車まで5分あまりしかない! このまま一緒に列車へ乗って来られては非常に困る。少々焦り
出した頃、大きな声で犬を呼ぶ叔母さんの声が響いた。直後にそちらへ小走りに立ち去って行く犬。この一言に、飼い主の威厳を見た気がしてとても逞しく感じた。無事に列車
に乗り込み、車窓にその叔母さんとその犬を見送った。犬は久しぶりの遊び相手を見送っているせいか、その姿に落ち着きが無いのが印象に残った。