2003/08/19 作成

辺川駅



牟岐線“辺川駅” 田圃の中に大きくカーブしたホームに集まる人は極わずか

      

駅から見える人家は数軒だけ  脇にあるコンクリート建材の工場が目立っている


   訪問日記  2002年1月28日 訪問
 
  この駅は牟岐線にあり、線名で使われる主要駅・牟岐のとなりに位置する。牟岐駅から3kmほど離れているが、市街地からは遠く外れて一面
 田圃の中にポツンと佇んでいる。そのためか利用者は28人/日(2001年度版JR全線全駅より引用)と、この線のなかでもトップクラスの閑寂ぶり
 である。駅のホームは嵩上げされていないうえに、線路が大きくカーブしたところにある。特に3扉車の車両中央部のドアはホームから段差を伴
 いながら大きな間隔が開くため危険である。しかし、JR四国側も安全対策のため、列車が到着するとドアとホームの間に設置された黄色いパト
 ライトが点滅する様になっていて、少ない下車客に対してもある程度の配慮はなされているようだ。

 今回の旅は、偶然にも私の誕生月と重なったため、JR四国が企画する「バースデーきっぷ」を利用した。この切符は四国島内であれば特急の
 グリーン(指定席)車を3日間全線乗り放題で10,000円という破格値なのである。当時、自宅の最寄り駅であった山陽本線の西条駅から出発。岡
 山からは快速マインライナーに乗継いで夕暮れの瀬戸大橋を渡って、すっかり暗くなってから琴平駅へと着く。そこで前出のバースデーきっぷと
 旅行計画に沿った特急・グリーン・指定席券等を求め、すっかり四国の定宿となった「坪尻駅」へ向かった。讃岐阿波国境の猪ノ鼻トンネル(3,8
 45m)を抜け、スイッチバックの引込み線からバックして、深い谷底に駅の明かりが薄暗く辺りを灯すホームへと静かに到着した。坪尻駅で一夜
 を明かし、早朝に阿波池田へと出てから特急「剣山2号」で徳島、そして普通列車を延々と乗り続け、ようやくこの辺川駅へ着いた。

 ホームに降り立ち、カーブに大きく車体を傾かせながらゆっくりと去っていく列車を見送りなら、ため息を一つ…。「またこんな旅をしている」と。
 意義の無い旅こそが放浪の真髄なのだろう?自由な空気にすっかり慣れてしまった感覚とは、旅を終えた日から社会復帰をする上で障害となり
 得るか?それでも冷静に考えてみれば次の旅への期待感なのか、平穏無事に過ごせる日常を失う恐怖からなのか、半ば条件反射的に会社へ
 出社していく。一度きりの人生とはいえ、放浪旅もその道を極めるには、安定した日常生活を捨てるという相当な勇気が必要なのであろう。