「秘境駅への訪問手段について」

 私は鉄道ファンであるが、秘境駅へのアクセスに鉄道以外の交通手段(車・バイク・自転車など)を使うことに
 反対しない。費用や時間には、旅する人のそれぞれの事情があるからだ。厳格な鉄道ファンからは、「邪道」と
 言われるかも知れない。しかし、旅とは本来、自由なものであり、雑多な日常から解放するために、非日常的
 な愉悦を感じる行動である。忙しい日常に生きる人にとって、せっかく取った短い休みを、ただ単に列車に乗り
 続けるだけで苦痛に終わらせるのは、本末転倒であるからだ。

 しかし、矛盾は承知だが、駅の訪問はできるだけ鉄道を利用したい。列車で訪れると「駅」は魅力的に映るもの。
 それは鉄道で旅する人だけが感じられる“真の喜び”であることに他ならない。少ない本数の列車に乗って、
 訪問が叶った瞬間。去り行く列車の愛おしさ。一抹の不安のなか、ようやく迎えに来た列車の逞しさ…
 こうした魅力の全ては、列車を使った秘境駅訪問の旅に凝縮されている。
 だが、旅には時間も費用も掛かる。許された条件のなかで、遠方にある駅を訪れる時などは、最初から最後まで
 列車だけ乗ることに固執するとプランにも大きな制約が出ることだろう。そのため、思い切って航空機で現地に
 飛んでから、鉄道旅行のスタートを切る方法もある。特にJR北海道は新千歳空港駅がターミナル内にあるため、
 利便性が良い。

 また、鉄道を愛するあまり、強いマニア意識で旅のプランを立ててしまうと、大切な人との旅立ちが障害になって
 しまうことがある。せっかくの楽しい旅だ。まずは寄り道のつもりで、身近な乗り物である“車で駅に訪れる”ことも
 良いだろう。そんな旅を続けるうちに、自然に列車へ乗りたくなってくるものだ。こうして鉄道の魅力に気付いた
 人たちが、ファンとして育っていくこと。そして、将来の鉄道趣味界の発展だけでなく、ローカル線を廃止から守る
 ためにも大きく貢献していくものと考えている。

                                           2009年7月19日  秘境駅訪問家 牛山隆信