2015/11/26 作成

川根小山駅



物音ひとつしない静かな山間に、今日も駅の一日が始まった。

    

列車交換出来る設備のほか、側線も備わっている。   シンプルな駅名標は読みやすく好感が持てる。   ログハウスのような待合室だが、人影はない。

    訪問日記  2011年10月22日 訪問

    大井川の上流域に沿って走る、大井川鐡道井川線。大きく蛇行する川に合わせて、線路もΩ(オメガ)状のカーブを描く。トンネルに挟まれた鬱蒼とした林のなか、2面2線のホームと側線を持つ小さな駅に
   停まった。駅舎は無いが近年建てられたと思われる、真新しいログハウスのような待合所がある。さらに、10台ほど止められるスチール製の自転車置き場も設置されているが、残念なことに1台もなかった。
   そんな寂しいところだが、小山地区は大井川における水力発電発祥の地である。1906年(明治39)年、日英両国の民間資本による「日英水力発電株式会社(日英水電)」による水力発電事業が計画された。

   その後、イギリス資本が撤退して日本単独での事業となる日英水電を設立。大きく蛇行した近接部(牛首:“ぎゃーのくび”という方言で呼ばれた)の僅か28.5mに水路を掘り、大井川水系初の水力発電所と
   して小山発電所(出力1400kw)が稼働をはじめた。ここで生まれた電気が浜松などの大都市に送られ、これから発展してゆく、多くの産業を支える糧となった。

   その後、上流に大きなダムが建設され、規模の小さいこちらの発電所は廃止・撤去された。こうして人々も発電事業も、上流へと遡っていった。いまでは発電とは縁の無い、鬱蒼とした森林と小さな茶畑だけ
   が残された。それでも毎日決まった時間に井川線の列車がやってくる。当たり前のことだが、たったそれだけでも幸せなことである。