2001/01/11 作成

南幌延駅

宗谷本線 “南幌延駅”周囲は牧場が広がる  駅のホームは綺麗に除雪されていた

    

短い板切れホームがポツンとあり、少し離れた所に恐ろしくボロい待合室がある    暗くて狭い待合室の中に一匹の猫が寂しげに鳴きながら入ってきた  

  訪問日記   2000年12月31日 訪問

  ここは宗谷本線の南幌延という小さな駅。周囲は牧場地帯で、酪農家と思われる人家が3軒だけで、同線に多い“何もない”という言葉が似合う駅の一例である。
 駅の構造は単純な一面一線の単式ホーム。JR以前の仮乗降場のまま受け継がれた板張りの短いタイプで、広大な風景にポツンと佇み、実に愛おしい姿を見せる。
 かような状況ゆえ普通列車でも通過が多く、1日あたり上下3本づつしか停車しない。ただでさえ少ない本数の列車を、バスのそれよろしく、希望の駅で乗降できる筈
 もなく、私のような秘境駅探訪者にとってはハードルの高い存在といえよう。

 今日のようにモータリゼーションが普及し、このような小さな駅はとっくの昔に忘れ去られていると思いきや、ホームが地元の方によって綺麗に除雪されていたのが
 印象に残った。しかし、傍らにある待合室はかなり古く、扉も壊れて雪が吹き込んでいた。さらに申し訳なさそうな、板を渡しただけの椅子があり、隅にかすれたペンキ
 で“グリーン座席指定” と書かれているのに思わず笑ってしまう。明日から21世紀を迎えようとしているのに、時の流れとは無縁の世界であった。

 夕刻になり冷え込みも厳しくなってきたので、暫し薄暗い待合室内に佇んでいた。そのうちに外から猫の鳴き声が聞こえてくる。何だろう?不思議な感覚だ。やがて
 室内に入って来て私に擦り寄ってきた。少しカマってやったが、すぐに出ていってしまった。もしかして私を同類と見て寄って来たのであろうか?この寂しげな猫も私と
 同じでたった一匹。そろそろ腹が減ってきたのだろう、家路に就くために雪の中へと消えて行った。