1999/12/18 作成

糠南駅

宗谷本線“糠南駅” 牧場の中にポツンと寂しく簡素な駅がある。

  

ホームは板切れの簡素なもので、待合室は物置利用。   来春から一気にスーパー特急に格上げされる急行“宗谷”が通過して行く。


  訪問日記  1999年12月10日 訪問

  最北の地へまっすぐ向かう宗谷本線。緑鮮やかな牧草地のなか、板張りのホームの上にはスチール製の物置が乗っていた。実はこれが待合室なのだが、ひとり入れば満員と
 いう狭さだ。おまけ程度の小窓から差し込む光だけでは薄暗いうえ、隙間だらけの床板からは、原野を吹き抜ける風がピューピューと音を立てて入り込む。そんな小さな駅の開
 業は1955(昭和30)年12月2日。道北の厳しい寒さのなか、“糠南仮乗降場”として開かれた。やがて時は流れ、JRに移行した1987(昭和62)年4月1日に晴れて駅へ昇格。だが、
 すでに周囲は著しい過疎化が進み、事実上制度の優遇を受けものに過ぎない。そのため停車する列車は少なく、一日あたり下りが3本、上りは2本だけ。列車での訪問はプラン
 作成の段階から悩ましいものだが、隣の問寒別駅から2キロあまりなので、片道を歩いて訪問すると良いだろう。運動不足の解消にも“駅間歩き”は最高の手段になるからだ。


 
さて、この駅には隣の上雄信内駅から雪の中を小1時間程かけ、3.5Kmを歩いて来た。途中、真っ白に氷結した天塩川を眼下に眺めながら到着。目の当たりにした駅は、あっけ
 ないほど簡素であり、これが待合室か?と見間違うほどであった。何しろスチール製の物置に小窓を取りつけただけのもので、それが隙間だらけの板切れホームの上に置かれ
 ているだけで、原野を吹き抜ける風が床の隙間からから上がってくる始末。それこそ底冷えする構造になっている。反面、恐らく夏は地獄の暑さとなり、四季を通じて快適度にお
 いては最悪の部類に属するに違いない。こうして薄暗い待合室の中で暇つぶしに駅ノートへ書き込みしていると、タイフォンが鳴り響いて急行“宗谷”が通過していった。やがて隣
 の上雄信内と同様、こうした秘境駅にもこまめに停車して行く名寄行きの普通列車に乗り込んだ。今夜の宿は、住民保養施設“天塩川温泉”と決めていたので、駅寝が日常の私
 にとっては最高の贅沢であり、とても楽しみにしているのであった。