2013/10/27 作成

大沢駅



奥羽本線 大沢駅 スノーシェッドに覆われた薄暗いホーム


       

ホームには小さな待合室がある プラベンチが物悲しい          隣は峠の力餅で知られる峠駅


       

旧線のホームから構内踏切を渡って新駅へ向かう      旧線ホームに人が踏み入る余地はない

    訪問日記   2004年7月某日 訪問

  ここは奥羽本線の大沢という元スイッチバック駅。奥羽本線の福島・山形県境は、険しい板谷峠をひかえ、1990(平成2)年9月1日の山形新幹線の開業まで、機関車牽引の
 普通列車はスイッチバックで登っていた。しかも“赤岩”、“板谷”、“峠”、“大沢”の4駅が連続してスイッチバックという天下の隘路で、全国でも指折りの豪雪地帯である。薄暗
 いスノーシェッドはポイント等の設備を豪雪から守るために設置されたものだ。その後、新幹線の運行による改軌工事で4駅すべてのスイッチバックが廃止され、スノーシェッド
 内にホームが移設されて現在のかたちになった。

 駅の開業は驚くほど古く、1899(明治32)年5月15日に路線の開通とともに大沢信号場として設置。7年後の1906(明治39)年12月25日に旅客駅へと格上げされて正式な駅に
 なった。首都圏から東北本線の福島を経て、山形、秋田、青森へと結ぶ主要な路線ゆえに客貨とも需要が多く、1968(昭和43)年に交流電化がなされた。しかし、スイッチバ
 ックの解消には、1990(平成2)年9月1日の山形新幹線の開業まで待たねばならなかった。念願叶った新幹線も当初は山形までだったが、1999(平成11)年12月4日に新庄ま
 で延伸。このまま秋田へと延びるかと思いきや、秋田へは盛岡から秋田新幹線、青森へは延伸された東北新幹線と、それぞれ別ルートが担うことになった。首都圏への動脈
 が分散されたことで混雑の解消には役立ったであろうが、東北の各都市の絆が絶たれて行くようで、いささかの寂しさを覚えるのは私だけであろうか?

 話が脱線したが、秘境駅の観点から見れば大沢駅は小さな集落のなかにある。だが、著しい過疎化によってもはや人家は数軒ほどしか存在しない。道路も県道232号線こそ
 通じているが道幅は狭く、主要な国道13号線は栗子峠(万世大路)を通るため通行量も少ない。もはや限界集落と化し、広い駅構内に打ち捨てられた多くの設備も新幹線開
 通以前の賑わいを偲ぶに留まる。時代の流れとは、繁栄の陰でかくも残酷な姿を晒すものだと痛感。このような人の目に留りにくい風景こそが現実を映す鏡であろう。