2001/9/4 作成

立木駅

山陰本線 “立木駅” 山間に佇む静かな駅の夕暮れは、虫の鳴き声と共に訪れる

      

周囲の人家は僅か数軒だけ    列車本数は多いが、主要道から遠く離れていて静か      駅前には小さな沢があり、自然環境も良い

   訪問日記   2001年8月8日 訪問

  この駅は、山陰本線の起点・京都駅から約一時間半ほどの場所にある。周囲は薄暗い山林、人家は数軒ほどが散在するだけで、人通りもなく静かな世界
 が広がっている。さらに駅前には山から流れてくる小さな沢があり、自然環境は抜群である。一方、駅は列車の交換を目的とした2面2線の長いホームを持ち、
 駅舎が撤去されてしまった跡地に、小さなカプセル型の待合室が建っている。この小さな待合室のベンチには地元の主婦が製作されたと思われるお手製の
 座布団があり、駅が愛されていることが伝わってくる。

 今回、私は18きっぷでの日本一周を成し遂げる旅の途上にあり、山陰本線の普通列車でゆっくりと北上していた。途中、以前訪れた“居組”、“餘部”のほか、
 “久谷”など新たな秘境駅発掘に邁進していた。山陰本線の終点となる幡生駅から始まった長い旅路も、起点の京都駅まであと少しとなる綾部駅で終わりを
 迎えた。その先は、北陸本線へバトンタッチさせる為、舞鶴線と小浜線を乗り継いで敦賀駅へと渡る計画を立てていた。その前に綾部駅から2駅先にあるこ
 の立木駅を、思い切って訪問することにした。事前に得た情報をもとに降りてみると、そこは日常の煩わしさを忘れさせてくれるような、長閑な空間が広がって
 いたのである。

 ほんの30分程度の滞在時間ではあったが、何だか心が満たされたような気がした。日本一周という強い自己満足の達成と、それに伴ったプレッシャーを感じ
 させる旅に少々疲れていたのかも知れない。やはり記録に没頭するような旅では、ある種の脅迫観念からか、心が落ち着かないことが度々ある。幾ら会社か
 ら正規に貰えた休みではあっても、10日間もフラフラと旅を続けていると、日頃から忙しく追い立てられていて、嫌気の差すこともある職場でさえ何だか心配
 になってくるから不思議なものだ。やはり自分は一介のしがないサラリーマンであることを思い知らされた。「旅人とは言っても、格好だけで真の旅人にあらず
 」と改めて悟った。まあ、こうして自分勝手な旅が出来るのも、普段から会社勤めして頂いたサラリーがあってのことだ。休み明けで出社したら、少しは張り切
 って仕事しようか?なんて、柄にもないことを考えていた…