2013/11/21 作成

天塩川温泉駅



宗谷本線 天塩川温泉駅  朝もやに煙る姿も美しい

        

日が暮れた板張りホームはまるでステージのようだ        駅名標のフレームは古いものを再利用していた


        

もやで辺りが見えなくても駅の佇まいだけで充分だ        待合室内はストーブも完備(背後に小上がりも有る)

    訪問日記    2012年10月7日 訪問

  ここは宗谷本線の天塩川温泉という小さな駅。駅から1.5km、徒歩20分あまりで「住民保養センター 天塩川温泉」という大きな温泉施設があり、日帰り入湯のほか宿泊
 もできる。駅名の通り観光化を意識していると思いきや、停車する列車は下り4本と上り4本だけに過ぎない。しかも普通列車でさえ通過するものがあり、うち下りの1本は
 15:00頃のため、宿泊客のチェックインにちょうど良い時刻をみすみす逃している有り様。本当に集客意欲があるのか懐疑的だが、駅から温泉施設へ歩く人は少なく、類
 に漏れず自動車が主役のようだ。

 ホームは1面1線の短い板張りで、停車する列車は大きくはみ出してしまう。傍らにはとんがり帽子のような赤い屋根の待合室が建っている。内部は2列のプラベンチに善
 意の座布団が敷かれストーブも完備。別室にトイレもあるほか、ここで駅寝して下さいと言わんばかりにカーペット敷きの小上がりまである。まさに至でり尽くせりの居住性
 だ。一方、駅の周囲は北海道の大自然そのもので原野と牧草地、そして天塩川の大河が悠々と横たわっている。人家は以前2軒ほど確認できたが、今回の訪問ではす
 っかり取り壊されて木片の山になっていた。温泉施設以外は無住地になってしまった様子で、施設の行き帰りと思われる自動車がたくさん通り過ぎて行くのでやるせない
 気持ちになる。

 駅は1956(昭和31)年7月1日、国鉄・宗谷本線の“南咲来仮乗降場”として開業。1981(昭和56)年7月、天塩川温泉仮乗降場へ改称。例によって国鉄分割民営化を機に、
 正式な駅へ昇格して現在へ至る。一方、天塩川温泉は、大正時代後半から昭和初期にかけて“常盤鉱泉”の名称で開かれた。当初は飲泉による治療を目的とした温泉
 であったが、1989年に現在の施設が開業している。もとは音威子府村営であったが、現在は民間に委託されているようだ。私はここに3回降りたが、やはり秘境駅訪問の
 疲れを癒やすのに最適なところだ。宿泊施設はご飯もボリュームがあって美味しく、露天風呂もある。さらにに部屋も広くて快適のうえ比較的安価なのも嬉しい。過去に
 一度だけ駅寝をしたこともあるが、近くにせっかくの良宿があるのだから一度宿泊されることをお勧めしたい。