2000/08/07 作成

驫木駅

五能線 “驫木駅”  眼前に広がる日本海、人も疎らなこの駅に夕暮れが訪れようとしていた

      

駅舎は周囲の雰囲気に良く溶けみ、絶妙なマッチングを見せる    バックにある自販機が邪魔かな?     ホーム側の壁板は張り替えられていた

   訪問日記   2000年7月20日訪問  
 
  ここは五能線の“驫木駅”という独特の響きを持つ駅である。海岸線に沿って走る五能線のなかでも、最も風光明媚なロケーションにあり、実にフォトジェニックな姿を見せる。
 さらに評価できるのは、ここはほとんど観光化されていないことだ。同線の広告塔といえる観光列車の「リゾートしらかみ」を通過させているのは世の風潮に逆行するようだが、
 沢山の人々に踏みにじられ、ゴミの山になって行く姿を見ずに済むので、個人的には好ましいと思っている。良い駅というのは誰かに教えてもらうのではなく、自分で発見して
 こそ真に価値がある。さらに、少ない列車をうまく組み合わせながら、やっとの思いで訪問した時の喜びは、観光旅行ではとても味わえないものだ。単に流行に流されるだけで
 はなく、本当に好きな人間が訪れ、まっさらな自然に包まれた風景を愛で、じっくりと安らぎの一時を過ごす。旅人たるもの、かようなスタイルで望みたいものである。

 少しばかり話が逸れたが、それだけ魅力を持った駅に間違いない。駅舎はご覧の通り、鄙びた海岸線の雰囲気と絶妙なマッチングを見せ、昨今流行りの鉄道を題材とした映画
 のセットを思わせるほど理想的なシチュエーションを演出する。駅舎の内部は以外に広く、造り付けの長椅子もあって駅寝はしやすい。さらにホームにはブナ?の大木を削ったベ
 ンチがあり、夕日を眺めながらのビールの旨さは最高であった。周囲には1軒とラーメン屋(廃業)が1軒あるだけで、なかなかの秘境度を誇るが、すぐ前を交通量の多い国道が
 通っているのが唯一残念であった。

 今回、東北秘境駅訪問旅の2日目にここへやって来た。夕方になったばかりで、まだ日が高い。一通りの撮影した後、海岸線で釣りをしてみることにした。1000円くらいでゲットし
 た、初心者向けの投げ釣りのセットをザックに偲ばせており、活躍の場を狙っていたのが正直なところ。テトラポットからおよそ1時間半ほどやってみたのだが、釣れたのは小さい
 フグが2尾だけ。食ったらヤバイ代物であった。撤収した後、今度は五能線を深浦方向へ2駅戻った“広戸駅”を訪問。その後、駅寝をするのに相応しい駅を探し、“千畳敷駅”ま
 で行ってみた。その間、良さそうな駅が無かったので諦めて再び引き返し、結局この“驫木駅”で駅寝することにした。日もとっぷりと暮れ、ホームにあるブナのベンチに腰掛けて
 飯を炊き、秋刀魚の蒲焼缶を載せた“特製秋刀魚蒲焼丼”を食す。たいして金はかかっていないが、最高にうまい飯を食い、ぼんやりと星空を眺めていた。やがて駅舎に戻って
 シュラフに包まり眠りに入った。 

 翌朝、寝ぼけまなこで起き出すが、何やら周りが騒がしい。「まずい!」 不覚にも寝坊してしまい、気が付けば待合室に女子高生の集団が入って来ていた。明らかにこちらを指
 して笑っている。さすがにこの時には参った。しかも同じ列車に乗らなくてはならない。下を向いて寝袋を丸める姿はとても人に見せられるような光景ではなかった・・・(泣)