2001/07/01 作成

土樽駅

上越線 “土樽駅”  小説の舞台になったここは、人里離れた場所にひっそりと建っていた


       

駅構内は2本の中線を備えた広い敷地         駅名標は旧国鉄タイプで、飾り気のないシンプルなタイプ

       

待合室内部は広くて清潔だが自販機の音が五月蝿い      下り線ホームから土樽山荘へ向かう専用出口

   訪問日記  2001年6月29日 訪問

  この駅は、上越線の新清水トンネルで県境を越えた新潟県側にある。一帯は新清水トンネルと新松川トンネルという2本の長大トンネルに挟まれた深い山中にあり、
 大きな集落はない。周囲に一般的な人家は無く、スキー場の宿として“土樽山荘”が1軒あるだけだ。スキーシーズンには賑わうのかも知れない。待合室は広く長椅子
 も4脚もある。駅以外なにもない場所であるが、トイレ、水道、電話、そして自動販売機まで完備され、無人であっても一通りの所要はカバーできる。
 
 そんな山間の駅にあって、静かな世界が広がっていると思いきや、実は駅の直ぐ前は関越自動車道である。通過する車の音が引っ切り無しに聞こえてきて残念だ。
 けれども、ここは川端康成の小説『雪国』の冒頭部分、「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」…は、この土樽駅が舞台になっている。当時は客扱いの無い信
 号場であったが、その情景は多くの人々の脳裏に焼きつく印象的なものであったに違いない。だが、集落のないような駅に定期的な乗降客がいるはずもなく、当然な
 がら無人駅である。保線設備と融雪溝を備えた広い敷地を誇る駅構内も、いささか場違いな雰囲気だが、冬季には豪雪地帯ゆえの除雪基地になるのであろう。
 

 今回、私はこの駅へオートバイでやって来た。時折雨に降られながらも関越自動車道をひた走り、ようやく湯沢I.Cで降りた。降りる直前に駅が見える場所があって、
 少し広がっていた駐車帯にバイクを停めて覗いて見た。なんと駅まで道が続いていて、最後の所がゲートによって封鎖されていた。誘惑に駆られるが、脱出すれば
 犯罪になってしまうので、大人しくインターチェンジで降りて周ることにする。インターを降りて国道17号線を左へ折れる道を進むと、程なく駅に着いた。先ほど確認した
 高速道路からのゲートを横目にバイクを止めて待合室へ入った。荷物を置いて付近の撮影を終えて戻ると、駅ノートがあるのを発見。誰も来ない待合室内で、静かな
 ひととき黙々と書きながら過ごす。そんな時に欲しいのはビールだが、列車での訪問なら許されることも、車やバイクの訪問ではご法度だ。自販機でコーラを買って飲
 みながら喉の乾きを癒した。こうして一連の訪問作業を終え、バイクを国道17線へ向けて発進させた。バックミラーに映る寂しげな駅舎が「また来いよ」と問い掛けてい
 るかのようだった。