2001/07/26 作成

筒石駅



北陸本線 “筒石駅” トンネルから地上へ上がって来ると、何もない山の中に出る

       

頚城トンネルの中にある駅のホームは上下線が斜向かいに設置されている   階段は下り線ホームからは、290段を上がってようやく地上へ出る

       

駅の待合室には、この時期“涼”を誘う風鈴があって、列車が来る度にトンネル内から吹き上がる風で鳴り響く    周囲に人家3軒、駅への道は左折する

   訪問日記   2001年7月20日 訪問

  この駅のホームは、上下線とも11,353mにもおよぶ北陸本線の頚城トンネル内にある。似たようなトンネル駅として、上越線の“土合駅”も挙げられるが、
 そちらは下り線のみだ。以前は地上に駅があったが、複線電化された1969(昭和44)年10月1日に現在の場所へ移転してこのような形態になった。利用
 者は1日に100人前後という少なさだが、トンネル内という特殊な環境のため、乗客の安全確保を目的として24時間体制で5名の駅員が配置されている
 有人駅でもある。駅のホームからは上り線が280段、下り線に至っては290段の階段を登らねば、地上の駅舎に出ることは出来ない。毎日のように通勤、
 通学をしている人は大変だと思うが、ここに勤務する駅員は、列車が到着するたびに階段を昇降しているのだ。
 
 地上に出ると、小さな駅舎が出迎える。そこには小さな待合室があって、夏の暑さを和らげる風鈴が掛っていた。当初はなぜ駅の軒先ではなく、何故この
 狭い待合室の中にあるのだろう? と不思議に思っていた。暫くすると、その答えが判明した。低い轟音とともにトンネル内を列車が通過する際に押し出
 された空気が階段を伝わって涼しい風が吹き上がってきた。すると一斉に飾ってあった風鈴が鳴り響くだはないか!一時ではあるが、巻き上がる涼風に
 ウットリとしてしまった。そして、駅の周囲を少々歩き周って見たが、人家は3軒程しか存在しない。近くに50軒ほどの集落があるというが、やはり世間から
 隔絶された感は否めない。駅舎の脇は崖になっていて、向こう側には地層が剥き出しになっている場所が見える。そこにオレンジ色をした“岩ゆり”が可憐
 な姿を留めつつ、ところどころ咲き誇り、とても人が入れない、いわば“高嶺の花”といったところであろうか。

 今回この駅へ訪れたのには、秘境駅訪問とは別の目的があった。それは、この夏に実行しようとしている長年の夢であった18きっぷ2枚使っての「日本
 一周秘境駅訪問旅」の事前準備として、“赤い青春18きっぷ”(常備券)を購入することであった。
ここに赤い常備券があるという情報は事前に得ていたの
 で、予定通り入手することが出来た。トンネル内のホームから降りたときから、色々とお世話になった駅員の清水さんから大層喜んでもらい、およそ40分
 間の列車待ちに、コーヒーと茶菓子をご馳走になった。駅でこのような“おもてなし”を受けるなんて、鉄道ファン冥利に尽きるというものだ。清水さんから、
 駅について丁寧な説明をしてもらっていると、あっという間に列車待ち時間は過ぎ去った。そして彼と共に再び地下にある駅ホームへ向かった。強風と共
 に直江津へと戻る列車がやって来た。発車の合図を送ると、彼は優しく手を振って私を見送ってくれた。今度また降りて立ち寄ってみたいという気持ちに
 させる素晴らしい駅であった。