2000/5/19 作成

矢岳駅

肥薩線 “矢岳駅” 古びた駅舎が旅情を誘う その昔、ここから皆に送られながら旅立ったのであろう。

      

明治の時代そのままの雰囲気が残る    SL資料館が併設され、当時ここで活躍したD51を保存している     真幸-矢岳間に日本三大車窓の一つが広がる


   訪問日記  2000年5月10日 訪問

  南国九州の深い山間、標高536.9mにある矢岳駅は、肥薩線のなかでも最高所にあり、辺りには高原の清々しい空気が漂う。周囲には人家が7、8軒程度の小集落のみ。
 国道267号線から分岐する、細い山道が延々と続いた“どん詰まり”のような場所にあり、鉄道開通前には陸の孤島と呼ばれていた場所だ。明治42年の開業当時から建つ
 木造駅舎は、訪れし者の心底を打つ素晴らしい建造物であり、鉄道が交通の主役だった時代の佇まいを、いまに色濃く伝えるものだ。近年になって鉄道旅行の良さが見
 直され、乗客も増えたことから観光列車「いさぶろう・しんぺい号」が走っている。車内ではJR九州の乗務員が、沿線の案内をする観光ガイドとなり、好評を博している。一
 時は赤字ローカル線として存続意義も問われたが、明治という遠い時代から生き続ける鉄道が、再び脚光を浴びる姿が見られることは、鉄道ファンにとっても真に嬉しいこ
 とである。

 さらにここはSL資料館があり、当時活躍していた“D51-170”が、さよなら列車を牽引した後に静態保存されている。以前にここに“58654”も一緒に保存されていたが、復元
 し“SLあそBOY”として、豊肥本線で活躍していた。しかし、車軸受けの損傷により運行停止に追い込まれてしまう。その後、JR小倉工場で大修復を受け、熊本から肥薩線
 を人吉まで“SL人吉”として不死鳥のように蘇ったことは記憶に新しい。こうして矢岳駅を発車した列車は、この線区で一番長い「矢岳トンネル」を抜け、左下の写真に見られ
 日本三大車窓の一つを眺め、隣のスイッチバック駅である“真幸駅”へと向かって行った。

 ※日本三大車窓とは : 国鉄が全国の景勝地を集めて発表したもので、この肥薩線 矢岳-真幸間の他に、JR東日本:篠ノ井線 姨捨駅、JR北海道:狩勝峠 新得-落合
 間(現在は新線切り.替えにて廃止)が指定されたものです。