01/08/18 作成  07/07/11 加筆修正

東都農駅

日豊本線 “東都濃駅” リニア実験線で脚光を浴びたこの駅も、役割を終えてしまった今、静寂感に包まれている…

    

農地が広がっている中を、リニア実験線跡が突っ切っている  周辺には3〜4軒の人家だけ 駅前にはリニア資料館跡が不気味な佇まいを見せる


  訪問日記  2001年8月6日 訪問

  この東都農駅は、宮崎県は日向灘に面した温暖な地にあり、細長い平野にはビニールハウスなどの農地が広がっていて、とても長閑な場所にある。 周囲の人家は
 3〜4軒が点在しているだけで、およそ人気というものを感じさせないが、以前ここは未来鉄道発祥の地として大勢の人々で賑わったことは記憶に新しい。 それは国鉄が
 未来の鉄道の夢をリニアモーターカーとして実現させるため、ここに実験線を造ったことに始まった。 この実験線で日々リニア車両を走らせて貴重なデーターを採取し、
 実用化へ向けての第1歩を踏み出した記念すべき場所なのである。 しかし、この宮崎実験線では総延長が7km程しかないため、本格的な実用化実験には役不足と
 なってしまい、現在では山梨県にある総延長16.7kmに及ぶ山梨実験線(中央リニア線?)にその座を譲っている。 そのためここは既に使われなくなって久しく、
 駅前にある“リニア資料館”も当時は多くの見物客を集めたのだが、現在ではそれも廃墟となって残っているに過ぎない。

 今回、この駅までは午前中に訪れた四国は土讃線の「土佐北川駅」より普通列車で一路南下し、その後特急列車とフェリーを使って九州へ渡ることから始まる。 
 鉄橋上にある土佐北川駅を発車した普通列車は、途中の秘境駅である新改駅で12分に及ぶ停車時間に周囲の探索を楽しみながら後免駅で下車した。 ここからは
 特急「しまんと1号」で高知、更に乗り継いだ特急「あしずり1号」で四国の最西端にある宿毛駅へと一気に走した。 今回は青春18きっぷを使っての普通列車による旅が
 基本となっているのだが、そうでもしないと九州の佐伯港へと渡るフェリーの時間に間に合わないために、止む無くこういった手段を取らざる得なかった。 5000円近くの
 出費は痛かったが、さすがに振り子式特急は速くて快適で、昨夜の夜行快速での睡眠不足をリクライニングシートで熟睡することで、少しばかり疲れを取り戻すことができた。
 こうして宿毛駅に到着したのだが、フェリー乗り場のある片島岸壁までのバスが一向に来ない。 不安になったので、駅前で待機していたタクシーで向かうことにした。
 時間的には7〜8分で到着したので大した金額ではなかった。 バスとの差額は、最悪乗り遅れてしまうことに対する安心料?と考えても納得の行く値段ではあった。
 港に着いて乗船名簿に書き込み、早速チケットを入手して乗船する。 佐伯港までの約2時間は2等船室の桟敷席でゆっくりと横になれた。 東京を出てまる二日間足を
 伸ばせて寝れなかったので、外の景色を眺めるまでもなく、早々と深い眠りの体制へと入ってしまった。

 気が着くと既に佐伯へ入港していた。 そそくさと下船して駅まで800m程の距離を、炎天下の中を汗を掻きながら歩いてようやく到着した。 駅前のコンビニで弁当を買いつつ、
 延岡行きの普通列車に乗車して宗太郎越えのある山間部を進んで行く。 途中にある宗太郎駅では列車交換により5分停車。 備え付けの駅ノートを眺めていると、
 車掌さんがやって来て暫く話しこんだ。 なんでも最近になってこうした駅へ降りるお客さんが増えたとのことで、個人的な感情ではあるが何だか嬉しくなってしまった。
 そして間も無く発車して延岡へと下る。 ここで宮崎空港行き普通列車に乗車し、前置きが非常に長くなってしまったが、この東都農駅へようやく辿り付いた。

 列車を降りて暫くすると突然の雨。 待合所で足止めを食らうが、タイミングを見計らって周囲の観察をする。 駅前の道は急な坂道で山の方へ吸い込まれて行く感じで、
 主要道からも遠く離れているため、とても静かな場所だ。 リニア実験線の跡を跨線橋の上から眺めて見るが、ここにはもう二度と列車?は走らないと思うと、未来の最先端を
 走っていたこの土地が、何だか非常に寂れたように映ってしまった。 それを裏付けるかのように駅前に存在している建物も、かつて“リニア資料館”として多くの見物客で
 賑わっていたが、現在ではすっかり廃墟と化してしまい得も知れぬ不気味さを振り撒いているに過ぎなかった。
 こうして雨による一時的な探索中断を余儀なくされつつ小一時間程の滞在時間が過ぎ去った。 やがてお迎えとなる列車がやってきたので乗車する。
 やはりこの駅にはリニアは似合わない。 何故こんな場所にこんなモノを作ったのかは全く解らない。 “らしくないことをするもんじゃない” という言葉がふと思い出された。
 そんな思いを感じながら、ゆっくりと普通列車に揺られてこの駅を後にして行った…