2000/11/24 作成  2011年10月22日訪問時の写真を追加掲載

奥大井湖上駅

    

ダム建設によって消滅していった村々は既に水の中  その後、観光化のため橋梁に挟まれた駅が誕生した

    

接岨峡温泉方面は、鉄橋の脇に歩道が併設されている           対岸には旧線跡が見られる

    

この駅の周囲には人家は一切存在しないが、町営施設として公園やレストハウスがある

   訪問日記  2000年11月16日 列車停車中に観察  その後、2011年10月22日に訪問

  ここは静岡県の山奥にある一風変わった駅。長島ダムによって造られたダム湖(接岨湖)にかかる“奥大井レインボーブリッジ”に挟まれ、ぽっかりと湖の上に浮かんでい
 るように見える。駅は湖の中に細長く突き出した半島にあって人家も車道も無く、まさに水の中に取り残された孤高の存在といえよう。なぜこのような場所に造られたのか?
 それは長島ダムの建設によって水没した旧線を、新線へ付け替えたことによる生まれた副産物といえよう。主に観光目的のため一般的な利用は皆無である。ホームには
 幸せを呼ぶ鐘“Happy Happy Bell 風の忘れもの”や、恋人たちの愛を誓う“愛の鍵箱”があることなどからも窺える。このため、休日には多くの観光客が訪れ、隣の接岨峡
 温泉駅まで歩道が併設されたレインボーブリッジを渡る姿も見られる。鉄道にとって本来、大きな湖を避けて通るものだが、大きな鉄橋で横断させることでサプライズを演出
 し、人跡まれな秘境の地を観光資源化させたのである。

 かような地形から、車道といったものは一切無いため車やバイクでの訪問は出来ない。ただし、列車の訪問以外に隣の“接阻峡温泉駅”から鉄橋に併設された歩道を含め、
 ハイキングコースになっているので、気分転換に歩いて行くのも良いだろう。ダムは完成して久しいが、対岸に旧線跡を見ることが出来る。新線の付け替えには多額の費用
 がかかることもあり、一時は廃線も検討されたそうだが、アプト式区間の路線も含めて大英断を下した大井川鉄道には拍手喝采を贈りたい。とはいえ、建設資金も親方的存
 在である“中部電力”がその大半を負担しており、なお運用後の赤字補填さえも面倒を見るという、実に有難い存在なのであった。そんな事を考えながら、奥大井の秘境を今
 も元気に走る森林鉄道。今後も末永く頑張ってもらいたいものである。