2007/07/28 作成

佐久広瀬駅

小海線“佐久広瀬駅” 千曲川の辺に花で飾られた可愛いらしい駅がポツンと佇んでいる…

        

ホームからは千曲川の流れが一望できる    周囲に人家は少なく、国道141号線からも遠く離れているのでとても静かな環境だ

   訪問日記  2003年8月26日 訪問

  ここは小海線にある“佐久広瀬”という小さな駅である。小海線といえば首都圏から気軽に行けるリゾート地として、清里や野辺山高原といった観光名所を控え、
 休日ともなれば数多くの乗客で賑う路線として知られる。さらにJR路線の中でも、いちばん標高が高い所を走り、野辺山駅の1345mのほか、最高地点になる踏切は
 1375mに及ぶ。さらにこの“佐久広瀬駅”に至っては、JR路線で5番目の標高となる1073mを数え、「最高所の秘境駅」と半ば強引に決め付けてしまいたいところだ。
 けれども、ここは国道141号線からは大きく外れており、細く曲がりくねった車道を進んだ先にあった。周囲にある人家も数軒しか存在しない辺鄙なところである。駅
 には白く小さな可愛らしい待合室があり、ホームの上からは千曲川の流れを望む。背後には河岸段丘の地形を利用した田んぼで、実に長閑な雰囲気が漂っていた。
 
 今回私は、2001年に広島県へ引っ越した後、“取りこぼした駅”を訪問しようと企て、夏の青春18きっぷを使って旅することにした。まず地元の駅から芸備線で広島
 まで出て、山陽・東海道本線の普通列車を延々と乗り継ぎ、ようやく静岡県の富士駅へたどり着いた時にはすでに深夜になっていた。やはり今回も宿を取っておらず、
 翌朝の身延線へ乗るため、駅のホームで一夜を明かした。夜中でも引っ切り無しに通る貨物列車の轟音に目を覚まし、蚊にも刺されて散々ではあったが、翌日以降
 とプランに期待を馳せていたため、さほど苦痛と感じることはなかった。どうやら旅(生活)の感覚が、一般人とはかなりズレているようだ。客観的に見て我ながら自身
 の性質と行動が、将来危惧されるところである。

 身延線の秘境駅候補として、“沼久保駅”、“寄畑駅”を下車して観察するが、少しばかり期待が先行してしまった感が強く、少々物足りない結果となってしまった。
 意気消沈しながら甲府方面へと進むが、途中で“井出駅”を見たときには、降りたくなる衝動に駆られた。しかし、プランに余裕が無いため、あきらめざる終えない。
 今度こちらを訪れたときに取っておこうと気持ちを入れ替え、暑さうだる甲府駅へと到着した。ここからは八王子に住んでいた時から馴染みのあった中央本線の普通
 列車に乗車。さらに小淵沢駅から小海線へと乗り換えてながらようやく到達。列車を降りてホームに立つと千曲川のせせらぎが響き、清々しい空気を吸い込みながら
 歩き回る午後のひと時は、最高の時間を演出してくれた。

 実はこの駅が秘境駅に相応しいと知ったのは、以外にも最近のことだ。ちなみに私の実家は八ヶ岳の反対側で、幾らでも立ち寄るチャンスはあった。“灯台もと暗し”
 とは良く言ったもので、まったく意識の範疇には無かったのである。知るきっかけは、有名な世俗的掲示板を何気に見ていたところ、駅名だけが書き込まれたことに
 始まる。これをヒントに調べたところ、訪問に相応しい駅であると判断した。かような経緯で訪問したが、誰かが書き込んだのか知れないが、個人的にとても感謝して
 いる。偶然の書きこみを頼りに旅立ち、結果、大きな収穫を得られたことは感慨深い。こうして気を良くしながら、迎えとなる小淵沢方面の列車に乗り込んで後にした。