2000/3/26 作成
新改駅
土讃本線“新改駅” 今となっては珍しいスイッチバック駅が、南国高知の山奥に潜んでいる。
駅舎は資材倉庫も兼ねているらしく、割と大きく綺麗であった 左は引込み線、右は土佐山田へ至る そして右手前が駅の方向である
待合室に扉は無く、駅寝にはちょっと向かない 最近駅ノートが新設され、暇潰し?には最高 駅の周囲に人家は2〜3軒だけがひっそりと
訪問日記 2000年3月18日 訪問
同じ土讃線にある坪尻駅と並び、急峻な四国山地にもうひとつ存在するスイッチバック駅が、この“新改駅”である。周囲を鬱蒼とした山々に囲まれ、人家はたった2軒だけ。
駅前には、かつて切符を委託販売していた商店が廃屋となり、不気味な佇まいを見せている。ホームの先は藪だらけで、そこでは線路の果てが唐突に終わりを告げる。この駅
にはまったく縁の無い特急列車の通過音が、ときおり山々に木霊するだけで、至って静かな環境にある。ここの利用者は駅から1kmほど急坂を下った平山地区の通学生とお年
寄りだけ。駅まで車道こそ通じてはいるが、集落とのあいだを運行するバスは無く、延々と急坂を登ってくるしかない。そんな不便な地域ではあるが、鉄道が唯一の交通手段の
ため、人々の駅に対する愛情は強く、いつもきれいに清掃されている。帰りの列車を降りるとき、駅は利用者一人ひとりに“お疲れ様でした”と話しかけているかのようだ。
今回、“新改駅”の訪問には、中国・四国地方を巡る旅として、津山から津山線の快速“ことぶき”で岡山、更に瀬戸大橋線・予讃線・土讃線をそれぞれ繋いで南下しながら、高知
県の山奥へやって来た。ここもスイッチバック駅で、四国では“坪尻駅”と2駅だけの貴重な存在である。停車する列車は駅へ進入する前、一旦引込み線に入って停車。その後、
運転士が車内を歩いて反対側の運転台へと移動していく。駅へ入る線路のポイントが切り替わると、列車は逆に進路を取り、藪だらけのホームへソロソロと入ってくる。ちなみに、
特急列車の待避などをする為に、ここで10分ほど停車をすることが多く、乗客もホームへ出て、気分転換に山奥の新鮮な空気を味わっている光景が日常的に見られる。ただし、
周囲は人家が2軒ほどしかなく、薄暗い駅前には廃屋となった商店が無気味な佇まいを見せていた。恐らく昔はここで切符を売っていたのであろう。
こうして、私一人がこの駅で下車して対向列車を待つことになった。40分程度時間があるので、スイッチバックの引込み線の方へ行って見ると、その終点は藪だらけの場所で
線路は唐突に終わっていた。引き返す途中で景色が広がる場所があり、集落が遥か下の方に見えるものの、急な坂道を恐らく2Km以上は歩くと思われた。そのため、ここを利用
する人は健脚な人に限られるのであろう。一通り観察を終えて待合室に戻り、最近設置されたという駅ノートに書きこみをしていると、エンジン音を響かせて列車がやって来た。
嬉しいことにキハ58系の3連である。乗車すると来た時と同じように引込み線へ入って向きを変え、夕暮れとともに長いトンネルへと吸い込まれて行くのであった。