2001/08/22 作成

田原坂駅

鹿児島本線 “田原坂駅”  人家数軒ほどの山間にあるこの駅は、利用者よりも通過する列車の方が多い

         

駅の待合室は一見レンガ造りで洒落てるが、内部は落書きの嵐で無残な状態    駅前にはこんな道が通っているだけで、ほとんど人が通らない

   訪問日記   2001年8月7日  訪問

  この“田原坂駅”は、九州の大動脈といえる鹿児島本線にあり、“特急つばめ”を初めとして数多くの列車が頻繁に行き交うところにある。だが、ここは
 周囲に人家が数軒程度しかなく、普通列車もおよそ半数が通過するために利用者は少ない。また国道からも遠く離れているため、車の騒音もほとんど
 聞こえてこない。このように書くとここが雰囲気の良い秘境駅としてイメージが浮かぶが、残念なことに駅の待合室は暴走族の仕業と思われるスプレー
 による落書きが一面に書かれ無残な姿であった。恐らくここで夜を明かそうと駅寝をしていたら、彼らから何をされるか判らない。自分の身を大切にした
 いなら夜間は近寄らない方が賢明であろう。
 
 “田原坂”という地名を聞いて学校で日本史の授業を思い出した方も多いだろう。この界隈は、日本近代史上最大の内戦である『西南の役』が繰り広げ
 られたところだ。険しい坂道が続くこの田原坂にこもった西郷隆盛が率いる薩摩軍に、官軍は猛攻撃を加え、17日間に及ぶ大激戦の末に薩摩軍は敗
 走の道をたどることになってしまった。この戦いでの死傷者は両軍合せて6,500人にのぼり、私学校の生徒など、前途多き若者たちが多くの命を落とし
 た。今もここは彼らの霊魂がさまよっていると言われる。人家が少ないのも頷けよう。
 
 今回、この駅に立ち寄ることにしたのは、以前に秘境駅調査をしていた際、乗車していた特急列車の車窓か周囲には人家が非常に少ないことが気に
 掛かっていた。そして今回、めでたく青春18きっぷによる日本一周旅のルート上へ組み入れ、念願の初訪問となった。しかし… 駅の待合室に1歩入っ
 て唖然としてしまった。壁はおろか天井まで派手に書かれたスプレーによる落書き。なんで、ここまで人が荒廃してしまうのか?こんな静かな田舎でこ
 のような事が起きるのか?計画の段階から期待をして、ようやく訪問が叶うと思いながら降りたのに。一寸、このような醜態を見てしまい、しばらくショッ
 クで身動きが出来なかった。やはり熊本という大都市から近いのが災いしているのか?劣悪な雰囲気の待合室に留まることは耐え難く、周囲を散策し
 ながら気分を紛らわすことにした。

 しばらくしてやってきた列車に乗車すると何だか救われた気持ちになった。数々の秘境駅訪問をしていると稀にこうした駅を見かける。残念ではあった
 が、それだけ次の訪問駅が素晴らしいもので有ることを期待して、気を取り直すのであった。