09/09/14 作成

日本最長鈍行 “2429D” 乗車記  Vol.1

  まず “2429D”とは列車番号を総称するもの。更に末尾の“D”は、ディーゼルカー(気動車)であることを意味する。こうして書き始めると、また
 鉄道マニアがゴタクを並べ始めた… と、受け取られかねない。しかし、これを“電車”と呼ぶなかれ。電気モーターではなくエンジンで走るのだ。
 少なくとも、“列車”と呼んでやってくれ。地方色豊かに“汽車”と言っても差し支えない。いち鉄道ファンとしては、気動車のことを電車だと言われ
 るのは、全身にうず痒い反応が出てしまう性質ゆえ、是非ともよろしく願いたいものである。特にニッポンの未来を担う立派なお子さんには、
 親として正しい鉄道教育が必要であることを認識されたい。だれだ、ハイブリッド気動車は電車だろ? とか言ってる屁理屈者は?(笑

 さて、話は脱線したが、いったい、この何の変哲も無い列車になぜこだわるのか?それは北海道の根室本線の滝川駅から釧路までの308.4kmを
 8時間1分をかけて走る日本一の長距離鈍行だからだ。その行程は、朝の9:37分に滝川を発車、途中の富良野で19分、落合で16分、帯広で31分、
 そして終点近くの大楽毛では17分も停車しながら、終点の釧路には17:38に到着する。表定速度(停車時間を含む時速)は、38.5km/hという
 鈍足ぶり。それは、この広大な北海道の台地を原付バイクに毛が生えた程度のスピードで走るようなものだ。そんなまどろっこしい列車なんて
 乗ってられるか!時間のムダだ!と、気の短い人なら即座に却下することだろう。しかし、旅とは本来、先を急ぐものではない。その行程を心ゆく
 まで楽しむものなのだ。

 しかしながら、この忙しい現代において、このような列車がなぜ生き残っているのか?恐らく車両の整備や運用上の理由があると思われるが、
 全区間を乗り通すような酔狂な客はいまい。いや、今日は9月6日だ。青春18きっぷの有効期間である7月20日〜9月10日に入っている。
 これから乗車しようとしている私以外にもいる筈だ。そう思いながら、大いなる時間の浪費を楽しもうと考え、こうして雨の降る始発の滝川駅で、
 しばし入線を待つことにした。


   
  
 
 “ねんりんピック”のマラソン競技会場となった当日の滝川駅。   一番線の先端は板張りホームで立て看板型の駅名標があった。   いよいよ2429Dの入線だ!

  いよいよ目的の列車“2429D”の登場だ。これに乗車するために用意したきっぷは、“青春18きっぷ”ではなく、札幌・道東ゾーンきっぷ。特急の
 自由席も乗れる何とも贅沢なきっぷだ。この嫌味なきっぷの使い方には仕方ない理由があるのだ。許してくれ。限られた時間のなかで、後のプラン
 に待っている秘境駅訪問をこなすには致し方ないのだ。昨日、新千歳空港に舞い降りた私は、件のきっぷを得るためにちょっとしたハプニングに
 巻き込まれた。それは、空港駅で過去に2回も同様な手口で発券してもらったものが、今回はここが周遊エリア内だから駄目だという。これは不覚!

 今までのはミスで申し訳けないと言われてしまっては、ゾーン外の駅に行って発券してもらう他ない。最寄りは苫小牧であるが、そこで買うと以降の
 プランに影響してしまう。万事休す。時刻表のさくいん地図を血眼になって睨み付ける。数十秒ほど経ったか、そこに解を見つけた!ゾーン外の駅が
 札幌の直ぐ近くにあったのだ。それは札沼線の八軒駅。桑園では函館本線でエリア内なので、一駅飛び出したエリア外へ向かう。幸い列車本数の
 多い区間だ。窓口の女性駅員に少しばかりの助言をしながら、程なく発券に成功!こうして北海道フリーきっぷの25,500円という大きな出費を免れ、
 ゾーンきっぷの12,000円と、片道201km以上にあたる函館本線の野田生〜南千歳間は、往復6,200円(規定で2割引)を足して18,200円に収めた。

 ちなみに帰りの片道分だけは手数料の210円を除いて、帰りの新千歳空港で払い戻しをしたため、実質15,310円になった。これで、青春18きっぷ
 との差は僅か3,810円。野田生〜南千歳の片道分を掛け捨てになるが、エリア内なら特急も使える万能なきっぷになるのだ。やれやれ。

   

 
 車両はキハ40 1776の一両だけ 鄙びた釧路行きのサボが刺さる。  8時間の旅を過ごすボックスシート。原色の青が最高!  函館本線と別れて一路南下する。

 “やれやれ”は、読者のセリフ。かなりマニアネタで話が脱線してしまった。申し訳ない。こうして目出度く?発車10分前に入線し、ほぼ中央の9番を
 陣取った。いささか混んでは来たが、独りボックスもチラホラあったので少しばかり安堵する。こうして定刻9:37に発車し、架線がうっとおしい函館
 本線に別れを告げる。やはり“汽車”は青空の下が良く似合うのだ。残念ながら今日の空は泣いているが…

   

  東滝川で3426Dと列車交換。“鉄子”もいる!  茂尻の古い木造駅舎に萌え。今度寄ってみよう。   野花南で2428Dと列車交換。千鳥式ホームは思いっきり遠い!

 隣の東滝川で富良野からの快速3426Dと交換、茂尻駅の木造駅舎は、どよ〜んとした雰囲気だったが、妙に気になる存在。往年の炭鉱街である
 芦別では2人しか下車しなかった。そして、ネーミングのかわいい野花南では、池田からの2428Dと列車交換。お互い長距離どうし、お疲れさん!
 さて、昨日は滝川のホテルが全く取れなかった。何で?って思ったら、そういうことか。冒頭の“ねんりんピック”の会場になっていたのね。
 そんなこともあって、宿取りに難儀をしたのだが、以前から気になってた、隣の江部乙駅の前にある“えべおつ温泉”へ宿泊できた。
 残りの一室の予約に滑り込みセーフ。ちょっと鄙びてるけど、天然温泉のお風呂は良かった。飯は普通だったけど、2食付きで6,900円を考えると
 及第点か?広島の会社を夜勤明けで飛び出し、飛行機に乗ってきて疲労した体… 朝がゆっくり出来たのも、今回の鈍行旅では助かった。

   

  富良野で19分停車 後部へキハ40 1742を連結して2両編成へ!  ガチャン!!! 連結手の真剣な眼差し。  側線にDD51が!私が金○日ならマイカーにしたい名車。

 富良野では何と19分も停車。やはり一大観光地である。かすかに聞こえてくる、“アーアー♪”という、さだまさしの歌声のなか、乗客の約半数が下車
 していった。私もちょっと散策しようか?ホームに下りて後部に繋ぐ車両を見に行く。連結シーンに群がる鉄道マニア。いや、一般の人でもいまや
 クライマックスなシーンになっているのだ。ホームの先には名車DD51ディーゼル機関車が! SLのD51を追い出したので、往年の鉄道ファンからは
 赤鬼と呼ばれて忌み嫌われた。しかし、その性能は凄い! 1100psのV型12気筒ディーゼルターボエンジンを2基載せた84tの重戦車だ。極寒冷地
 仕様のツララ切りと旋回窓が魅惑のスタイルに華を添える。私がもしも金○日だったら、間違いなく愛車にしただろうなぁ〜。いや、冗談だよ(笑

   

  いったん改札を出て買出ししないと!まだまだ道中は長い。 という訳で、カツサンドとメロンパン、そしてサッポロクラシック! をいをい、まだ昼だぞ。

 滝川を出て1持間10分。数分程度の列車交換ならザラにあるが、19分あるとは呆れる。まあ、今回は先を急がないゆっくりモードの旅だ。
 買出しに、小用に、全ての用事が余裕を持って出来る。いつもと違うこの幸せな時間。心のどこかで取材だからって禁酒を誓っていたのに、
 優柔不断な私は思わずビールを仕入れてしまった。おや、もうプルタブが開いてるぞ。眠くなったら一巻の終わりだ。釧路まであと6時間30分
 もあるというのに!我ながらアフォさ加減に笑いが出てきそうだ。ホンマに大丈夫やろか?