2012/11/2 作成

 最北の秘境駅をめぐる旅  Vol.5


 5日目(2012年10月9日)

    

 早朝、新得の宿“宮城屋旅館”を出発。瀟洒なデザインの新得駅から新鋭キハ261系の特急“スーパーとかち2号”に乗車し新夕張駅に着く。
 駅前にはかつて夕張線時代に“紅葉山駅”だった名残の駅名標がある。以前は錆び朽ちていたが、綺麗にメンテナンスされたのは嬉しいも
 のの、こっそり字体を変えていたのは残念であった。駅前広場の向こう側に見えるコンビニで食料調達。今度は石勝線の普通列車に乗り込
 み、“東追分駅”で降りた。


     

 ここはホームからの広大な風景で知られ、“檀れい”が出演した“サントリー金麦”CMのロケ地、“東丘通り踏切”は隠れた名所になって
 いる。駅に通じている道は未舗装路で、人家は農家が数軒ほど散在するに過ぎない。駅の構造は2面2線のホームに跨線橋を備えたも
 のだが、待合室は階段の延長上にある雪切り室のような簡素なもの。以前あった椅子も撤去され、ただ寂しい雰囲気であった。ところが、
 跨線橋の上からの展望はダイナミックで、まさしく“秘境駅展望台”と呼ぶに相応しい。のどかな牧歌的風景は心を和ませ、視界に入るも
 の全てを収めたくなる衝動に駆られる。持って来た24-120mmF4レンズの広角域では足りず、秘宝14-24mmF2.8レンズを持ってくれば
 良かったと後悔するほど素晴らしい風景であった。


    

 折り返して、“十三里駅”で降りる。先の東追分駅と基本構造は一緒だが、唯一異なる点は待合室に3連プラベンチが装備され、ちょっ
 とした休憩には有り難い。しかし、脇を通る国道にはひっきりなしにクルマが通り、背後には高速道路も通っていて雰囲気的に残念で
 ある。周囲に人家は裏側に1軒のほか、表側に規模の大きいメロン農家があるのみで、車道の一件を除けばランクインするほど惜しい
 存在であった。ちなみにメロン農家の看板が、「夕張わメロンの里:ダドー」と意味不明な疑問を誘う。よっぽど働いている人にツッコミを
 入れたくなったが、話が長くなっても面倒だし、場合によっては試食を勧められた挙句、強烈な“買ってねビーム”を浴びせられたら厄介
 であること極まりない。観光地に不慣れな寂しくも貧しい旅人は、何故か商人の臭いに敏感で、即警戒モード入ってしまうことをお許し
 頂きたい。


    

 十三里駅から再び折り返し、追分駅で一旦下車。ゾーン券終了後の乗車券や特急券類を買い、岩見沢行きの普通列車に乗り換えた。
 およそ15年ぶりに乗車する区間だけに車窓にも力が入る。途中の由仁駅の駅舎が建て替えられた事実に絶句。マンサード屋根にキ
 ノコ状の煙突が牧歌的な優しいデザインの駅舎を失ったことは誠に残念。撮影できなかった悔しさもにじむ。こうして目的の“栗丘駅”
 で下車。「栗山、栗丘、栗沢」のいわゆる“三栗駅”のひとつ。一番地味な存在だが、位置的にセンターを張っていたりする。駅舎は、
 この地区に多いあっさりとした規格モノ。対向するホームも使われなくなって久しく、跨線橋は板で塞がれていた。さらにホーム突端の
 コンクリートは鉄筋が露出するほど腐食し、半世紀前まで石炭輸送で賑わったメインルートの凋落ぶりに愕然とした。これでも秘境駅
 調査の視点では、あまりに人家が多く、及第点には達しない。いずれにしても、13年も訪問していれば、空振りが多くて当然である。

 再び折り返して、先ほどの追分駅を通り過ぎ、苫小牧まで乗り通した。この時点で5日間お世話になった“札幌・道北ゾーン”のフリー
 区間を終了。本当にトコトンしゃぶり尽くしたと我ながら悦に入る。この先は、野田生までの“かえり券”を使い、特急“すずらん6号”に
 乗車。夕暮れの樽前山を眺めながら、東室蘭で学生で混雑した普通列車に乗り換え、宿を取った伊達紋別で下車。途中で酒類を購
 入し、“伊達ビジネスホテル・キャッスル”に投宿。いよいよ明日は最終日。とっておきの駅に訪問するのが、今から楽しみだ!