2008年8月19日 作成

もたて山駅



恐怖感さえ覚える333‰の急勾配に、板切れホームが張り付いている。

        

駅のホームは簡素な板切れだが、屋根とベンチが設置されていて何故か嬉しい。

        

急勾配中の板切れホーム。滑り止めこそ付いているが、雨天時には転倒せぬよう、くれぐれも注意したい。

  訪問日記   2008年5月23日 訪問

  この駅は比叡山の坂本ケーブルの「ほうらい丘」と同じく中間駅で、上下列車の交換地点よりも山上側にある。駅は333‰の勾配上にあるが、そのホームは
 
板切れの簡素なもので階段状になっておらず、板に滑り止めの横材が打ち付けられているだけだ。そのため、雨天ならともかく、降雪時などは転倒する危険
 性が増すため、充分に注意する必要がある。
そのホームには場当たり的に思える小さな屋根と、定員2〜3名の小さなベンチが設置されていて、ケーブルカー
 を待つ束の間の一時には有り難いものだ。
また、駅の周囲はご覧の通りに鬱蒼とした森林で、もちろん人家は一軒も存在ぜず、そこに続く車道もない。
 そこには、山上の延暦寺と麓の坂本とを結ぶハイキングコースが続いているだけだが、麓の「ケーブル坂本駅」までの距離はケーブルカーの2キロ弱に対して、
 大きく迂回しており、何と4km近くも足元の悪い山道を歩かされることを覚悟する必要がある。荷物が多い人はその点、充分に考慮したい。また、この駅の近く
 には“土佐日記”の作者である“紀貫之”の墓があり、更に琵琶湖を一望できる展望所もあるので、名所旧跡を辿りながら散策するのも良いだろう。

 さて、今回この駅を訪問するに当たって、下方にある隣のほうらい丘駅を訪問し、麓のケーブル坂本駅でお願いした通りにここで下車することが出来た。
 駅は先ほどよりも更に急勾配になっており、その迫力も一段と凄みを増している。やはり麓側の駅よりも山が深くなっていることを肌で感じられるのであった。
 私を乗せてきた列車は、発車合図の笛の後、音も無くソロソロと発車していった。15分後には麓へ下る列車、そして30分後には同じ方向に上る列車が来る
 のが解っているため、取り残されてしまったという悲壮感は無い。しかし、そのまま上るにしては余りにも単純な行程だし、周囲の状況も掴めないので、今回は
 敢えて全線完乗を見送り、ハイキングコースで麓のケーブル坂本へ降りることにした。※ちなみに帰りのケーブル代(片道840円)を浮かせる目的であったことも
 付け加えておこう(笑)

 しかし、その帰り道の選択が間違いであったことを思い知るのに大して時間は掛からなかった。このハイキングコースはケーブルで辿った距離のほぼ2倍に
 あたる約4kmで大きく迂回するうえ、所々崩れかかっていて足場が悪い。そして滅多に歩行者が通らないと見え、行く手を蜘蛛の巣のヘッドバットに連打される
 羽目になった。5月も末に近い初夏の陽気は30度を越え、蒸し暑い鬱蒼とした森林は風通りを全くと良いほど遮っている。更にシュラフとマットを含む駅寝装備
 に加え、レンズ4本を含む一眼レフと、クソ重いノートパソコンの入ったカメラバッグを抱えた格好で下ることになり、その疲労は荒い呼吸と大汗と共に、自らの
 体内に容赦なく蓄積して行くのであった。これが登りであったら、速攻でリタイヤし、後日装備を見直してリベンジを余儀なくされたであろう。
 こうして、山道が終わってようやく麓に降りたところは、比叡山高校の野球グランドで、一瞬道を間違えたかと思われたが、傍に小さく「ケーブル坂本駅」の道標を
 発見して安堵する。あまりの暑さにアクエリアスを一気飲みしながら、JR比叡山坂本駅行きのバスに乗り込み、クーラーに当たりながら目を細め、暫し英気を
 取り戻すのであった。

       

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